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革命

ある 静かな午後
Ns Stationの電話が鳴った


RRRRRRRR

RRRRRRRR

あの音は 外線だ


はい ××病棟 らんてぃすです











その外線電話は 聞き覚えのある声だった


『いつもお世話になります こちら 桔梗庵(仮名)です どーもぉ』

病院の近所のらーめん屋さんだ
安くて おいしいので ときどき出前を頼むことがある
夫婦でやってる小さな店で おっちゃんもおばちゃんも 愛想がいい


あ~ ども~
こちらこそ~ いつもお世話になってます

って あれ?
今日 誰か 出前頼んでたっけ??

『いやいや ちがうんですよ あのね

 おたくの病棟 イシハラ○○さん(仮名)って 患者さん います?』


・・・ いやな予感がした


・・・はい イシハラさんは ウチの病棟の患者さんですが。。。。


『あ~~ やっぱりね 
 あのね 今 イシハラさん ウチの店にみえてましてね
 らーめんと餃子 召し上がられたんですけどね

 お金 持ってらっしゃらないようでね~~~

 らーめんと餃子 しめて ¥1000(税込み)
 お代をいただきたいんですがね~。。。。。。。。。。』



ΣΣ(゚Д゚;) ヤッチマッタカ!!!



あわてて 財布をひっつかみ
同僚♂と二人で 桔梗庵さんに走る


店につくと
イシハラさんは にこにこして テーブルの前に座っていて
彼の前には 空のどんぶりと 餃子のお皿

ほかには お客さんは いなかった

ぺこぺこと頭を下げ 代金を支払う


『ええよ ええよ そんなに謝らんでも
 うちの店は おたくの病院が開院したときからの 30年以上のつきあいだからねぇ
 ゴトウ総婦長(ずーーーっと昔の総婦長らしい)も よぅ来てくれはった
 開放(病棟)の患者さんらも よぅ来てくれはるしね
 ほんま こっちも お世話になっとるんよ
 
 イシハラさん 今度は お財布お持ちになって また おいでくださいねぇ~』


終始 にこにこと笑顔をたやさない 店のご夫婦に
心から感謝


病院への帰り道

イシハラさんを間に 私と同僚と 3人で てくてくと歩きながら
イシハラさんに きいてみた


「イシハラさん どうして あのお店に行ったの」

『前から 看板を見てたから・・・今日は行ってみたいな って なんとなく思った
 さっき ノートに書いてたら 行ってもいいと思って。。。』

そういえば
昼休みのあいだじゅう 彼は ノートになにやらいろいろと書き込んでいた・・・

それに 前から看板を見てた ということは
以前から 「病院敷地内のみ 単独散歩可」という許可を破って
たびたび 院外に散歩に行っていた ということになる。。。

「ねぇ イシハラさん・・・でもさ お金持ってなかったでしょ」

『あの紙見せれば お金払ったのと同じだと思ったから』


・・・そういうことか

あの紙 と 彼が言うのは 「外出伝票」と「売店伝票」のことだ

院内の単独散歩に出るとき
患者さんは 病院名と 自分の氏名の入った「外出伝票」という紙を持つ
ウチの病棟のような『閉鎖病棟』の患者さんは 院内のみ
『開放病棟』の患者さんは 病院周辺の散歩区域まで 自由に行くことができる

イシハラさんは 院内のみ なので 院外に出てしまった時点で NG

そして 「売店伝票」

院内の売店のみで使うもので
現金を持っていない患者さんが 売店で買い物をしたときに
その伝票と出すと 売店のおばちゃんが その金額を記入する
複写になっているその伝票は ぴりりと破られ 事務所にまわされ
事務所の その患者さんの口座から お金が引き落とされる という仕組み

当然のことながら
ウチの病院の売店でしか 使えない 


長年 入院している患者さん
現金を使う機会が ひじょーーーーに少ないとはいえ
「普通のお店では 現金で支払う」という社会性まで 失われてしまったのか・・・ orz

社会性を奪ってしまったのは 私たちなのかな。。。


「あのねぇ イシハラさん
 あの伝票が使えるのは 病院の中だけだよ!
 外のお店では 現金で払わないとだめなんだよ! 
 イシハラさんだって 昔は そうしてたでしょ」



『うーん でもね
 先週 僕が起こした革命で あの紙を見せるだけで 好きなものが買える!
 って ことになったから もう 大丈夫だと思ったんだよ

 そしたら だめだ って言われたから おかしいな と思って・・・」



・・・ そんな 革命 ないから。


 orz

by latenscurtis | 2006-06-18 17:52 | hospital